仲間を持つだけで苦しい気持ちは緩和されます。
それはみなさんも何となくそうだなと感じている方も多いと思います。
親しい仲間から離し、見知らぬ動物同士を一緒に入れて心理的ストレスを観察したという実験があります。
若いサルを新しい環境に1匹置いた場合は、大きなストレスがかかるのに対し、数匹を一緒に入れた場合はストレスがあまり見受けられません。
また、心筋梗塞とうつ病を併発している患者の中で、社会的な支援(ソーシャルサポート)がない人は、ある人に比べて心筋梗塞によって死亡する確率が3~4倍高くなるという研究結果もあるそうです。
「仲間がいる」ただそれだけで、心強さを感じることができます。
ある学者が試験中の女子大学生を調査した結果、友人の少ない女子学生の喫煙量は、友人の多い学生に比べ平均で54パーセント増加していました。
飲酒は、孤独な学生では平均に比べ約20パーセント増加したのに対して、友人と過ごす機会が多い学生では約17パーセント減少したそうです。
このことは、「友人」がストレスの緩和になっていることを示しています。
仲間からの支援が得られる状態は、生物学的にストレスを減らすことは間違いなさそうです。
あなたの「親しい友人」を3人想像してください。
その3人が全て職場の仲間や仕事関係の友人だった場合は要注意です。
会社にリストラされたり、転職した経験のある方は思い当たることがあるかと思います。
毎日のように飲みに行き、日々語り合い当時は「親友」だと思っていた職場の仲間たちから、会社を辞めた途端に電話もメールもラインも来なくなるという現状です。
私も転職してからは、職場の人とは一切連絡していません。
あなたが本当に深い友情を求めて職場の人と「仲間」になっているのであれば、それはすばらしいことです。
しかし、そういう友人に上司と人間関係が上手くいっていないことや、会社を辞めようと思っていることを相談すことができるでしょうか。
恐らくためらうと思います。
他の人の耳に入ったら大変と思うと、職場の友人関係だからこそ相談できないジレンマに陥ります。
職場の友人を否定するわけではありません。
問題なのは、職場にしか友人がいないことです。
職場、学校、地域以外のニュートラルな関係、利害関係が一切ない場で知り合った友達が非常に大切です。
例えば、「趣味のサークル」「習いごと」「スポーツ同好会」などです。
このニュートラルに知り合った友人は気兼ねせずに話をすることができます。
これは大きなメリットですので、ぜひ活用したいところです。
相手の職業や住所がわからない、インターネットであれば匿名ですがそれらが人間関係を薄くさせているかというと、そうではありません。
もし、会社のことを話しても会社の上司に伝わることは絶対にないので、かえって気楽に色々なことを相談できるということもあります。
友人や仲間は一点に集中するのではなく、バラエティに富んでいた方が自由度があり、その方がいいのです。
フェイスブックやツイッターなどSNSを上手に使えば、趣味、興味、出身地など共通点のある人と簡単に出会うことができます。
しかし、苦しい状態になると、誰とも会いたくない、一人でいたいという気持ちが強まります。
人と会うには意外とエネルギーが必要です。
「苦しい」状況に陥ると、そのエネルギーも乏しくなり、人と会いたくなくなってしまうのです。
人と会いたくないときに、無理に会う必要はありません。
相手に変な気を遣ってしまい、余計に疲れてしまいます。
しかし、人と会いたくない状態が長引いてしまうのは好ましいことではありません。
いつの間にか「孤独」に陥ってしまい、「苦しさ」をひとりで背負うことになるからです。
本来なら「話す」「相談する」ことによって解消できる苦しさが対処不能なレベルまで大きくなってしまうこともあります。
孤立、孤独は苦しいの増強要素です。
この状態に陥ると本来の苦しさが何倍も大きくなってしまいます。
ですから、人と会いたくない「苦しい」状態でも人との繋がりを意識する。
友達や仲間に弱音を吐く、話しを聞いてもらうことをこころがけてほしいです。
カウンセリングの目的もここにあります。
一人で悩んでいると不安や苦しさがどんどん大きくなって、うつ病などの精神疾患につばがる恐れがあるからです。
人に話しを聞いてもらう、相談することにより不安や苦しさは軽減されます。
これを上手く活用していただきたいのです。
次に笑うことの重要性について述べます。
先のブログにも書きましたが、「笑う」は神が人間にくれた最高のプレゼントだと思います。
笑えば、気分爽快になります。
逆にしかめっ面をしているとモチベーションはなかなか上がりません。
心理学者ウィリアム・ジェームズは
「楽しいから笑うのではない。笑うから楽しいのだ。」
と言っています。
人間苦しいときは、苦しい表情になります。
そこをあえて笑顔にします。
不思議と明るい気分になってきます。
これは根拠があり、行動が先か、感情が先かということになりますが、心理学の実験で「感情よりも行動が先」であることが判明しました。
脳は、楽しいから笑顔を作ろうとしているわけではなく、「笑顔になったあとに楽しいという感情」が出てきます。
笑顔を作ると3種類の脳内物質が分泌されます。
1つは癒しの脳内物質のセロトニン。
セロトニンは顔の表情を作る筋肉も調整しています。
逆に自然な笑顔を作るだけで、セロトニンの分泌は上がります。
2つ目は幸福物質のドーパミンです。
ドーパミンが分泌されると、「楽しい」「幸せな」気持ちになります。
3つ目が脳内麻薬エンドロフィンです。
エンドロフィンはドーパミンの数十倍の幸福ホルモンです。
「感謝」「感動」など幸福感が最高レベルに達します。
さらに、笑顔にはストレスホルモンであるコルチゾールの働きを抑制し、血圧や血糖値も下げます。
感情を抑えるうえで、一番楽で、手っ取り早いのは「笑顔」を作ることをお話ししました。
ある研究によると被験者にある表情を作ってもらったときの、心拍数、体温、肌の電気信号、筋肉の緊張などを機械で測定し、記録しました。
次に「笑顔」「恐怖」「怒り」の3つの表情をしてもらいます。
その後、顔の変化は作らず、心の中で「笑顔」「恐怖」「怒り」の表情を思い出してもらいます。
その結果、笑顔を作ると、わずか10秒で安心しているときと同様な身体的変化が出ました。
安心したときの変化とは、心拍数が低下し、筋肉も弛緩したり、リラックス状態になることです。
つまり「笑顔」の表情を作るだけで、副交感神経(リラックスの神経=夜寝るときに優位になる神経)が優位になったのです。
一方、笑顔を作っているのを心の中で想像するのも同様な観察を得ることができました。
しかし、効果が出るまでに30秒かかったそうです。
実際に表情を出してもらったときは10秒ですから、笑顔を作ることはいかに凄いことかがわかります。
これほど簡単で効果が早く、感情を元に戻す方法はありません。
最強ともいえるでしょう。
しかし、「苦しい」「不安」「緊張」のネガティブな感情に支配されている状態では笑顔を作ることは簡単でありません。
そのためにも、普段から笑顔をつくるトレーニングをすることが重要です。
髭を剃るとき、化粧をするときなど鏡をみるときが毎日あると思いますが、そのときに笑顔をつくってみてください。
毎日、毎日の積み重ねが先ほど述べたセロトニン、ドーパミン、エンドロフィンの脳内三大幸せホルモンの分泌に繋がっていきます。